About "Regression therapy"
「Regression therapy」という言葉に最初に行き当たったのは、Rolling Stone誌のアクセル・ローズのインタビュー記事だった。ガンズ・アンド・ローゼズがようやく2枚目のオリジナルアルバム『Use Your Illusion I&II』 の2枚をリリースして約1年後、1992年の話である。
デビュー当時からその発言や行動で物議をかもすことの多かったガンズ・アンド・ローゼズだったが、特にボーカリストのアクセル・ローズは、女性への虐待的な行為やホモセクシャルへの差別的発言などが問題となっていた。
そのインタビューを読むと、彼は心理療法家の下で治療を試みていたようである。
その治療の中、「Regression therapy」によって、受胎時にまで記憶を遡ったのだという。そして、そこで心の奥に押し込んで、意識の上では存在しないものとしていた自分の問題の原因を見出したのである。
アクセルの発言の一部を引用しよう。
“...what I found out in therapy is, my mother and him (*Axl’s biological father) weren’t getting along. And he kidnapped me, because someone wasn’t watching me. I remember a needle. I remember getting a shot. And I remember being sexually abused by this man and watching something horrible happen to my mother when she came to get me.
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I got a lot of violent, abusive thought toward women out of watching my mom with this man. I was two years old, impressionable, and saw this. I figured that’s how you treat a woman.
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Homophobic? I think I’ve got a problem, if my dad fucked me in the ass when I was two.”
この記事を読んだとき、私はまだ高校生だった。本などで、子供への性的虐待についてまるっきり知らなかったわけではなかったけれど、わずか二歳で、実父からこのような性的虐待を受けたという告白が有名ミュージシャンから出たというのは、かなり生々しく衝撃的だった。
それから約20年。ふとしたお喋りから、「退行催眠」について聞くことがあった。
もしやこれは「Regression therapy」のこと?
「そうか、日本でもそういう催眠を用いて年齢退行していくという療法を行う心理療法家がいるのだなあ」と思い、「そういえば日本の今の心理療法ってどんな感じなんだろう?」と、ちょっとぐぐってみることに。
ところが。これが、随分私の考えていたことと違っていて、驚くこととなる。
Googleで「退行催眠」と入れてみると、ばばばっとヒットしたのは、「前世退行催眠」「前世療法」というものばかりだった。
前世??あのう、私は心理学とか心理療法のことについて調べたいのであって、オカルトとかニューエイジとか、そういうのは要らんのだけど…
とはいうものの、好奇心に駆られていくつかのサイトを見てみると、要するに「催眠で年齢を退行していって、そのまま前世にまで戻る」ということのようである。
で、その「前世療法」とか「前世退行催眠療法」とか、そういうのをやっている方々の肩書きは、精神科医や臨床心理士ではなく、「ヒプノセラピスト(=Hypnotherapist?催眠療法士?)」となっていた。そんな肩書きというか資格があったんでっか??
うーむ。前世?
てゆーか、いつの間に「Regression therapy」って、前世を見るもんになっちゃったんだ?私は催眠というのは、医師や臨床心理士が治療を行う際、必要に応じて一種のツールとして行うものだと思っていたのだが、違ったのだろうか。(^_^;)
調べてみると、退行催眠と前世研究というのは、カナダの生化学者であり精神医学の教授であるイアン・スティーブンソン氏(Ian Stevenson, M.D. 1918-2007)による著作『前世を記憶する子供たち』が有名であるらしい。スティーブンソン氏は30年以上に渡って世界中を回り、子供たちの語る3000以上の過去世を記録している。
また、アメリカの精神科医ブライアン・L・ワイス氏(Brian L. Weiss, M.D)の著作『前世療法』がベストセラーとなり、これが前世退行催眠というものを広く一般に知らしめることとなったようだ。
但し、晩年イアン・スティーブンソン氏は、University of Virginia, Health Systemのサイトに、“Concerns about Hypnotic Regression”という退行催眠に対する危惧と警告の記事を発表している。。(http://www.healthsystem.virginia.edu/internet/personalitystudies/regression.cfm)
この記事の内容によると、「催眠下の状態というのは、夢を見ている状態とほぼ同じで、従って、催眠下で語られた事柄は、基本的にその人の潜在意識によるフィクション或いは想像の産物である。」という。
しかも、催眠中に見たことが鮮やかでリアルであるとか、内容の整合性があるとか、歴史的事実や詳細に及んでいるとかいうのは、本当の過去の記憶か想像の産物かということを区別する根拠にならないのだそうである。
相模女子大学の石原勇一氏は、それを次のように説明している。
「多くの人が前世体験を事実と考えるのは、イメージがとても鮮明で強烈な印象を与え、イメージが自律的に展開することがその理由である。イメージの鮮明さについては、ロフタスの実験で実証されたように、客観的記憶よりも偽記憶の方がむしろ鮮明になるのだから、当然客観性の根拠にはならない。催眠療法やイメージ療法を実施すればわかることであるが、深いリラクセーション状態に入れば、客観記憶であろうと想像であろうと、非常に鮮明で明瞭なイメージを見ることができるのである。そしてそのような体験は、極度に集中かつ弛緩した状態であるために、現実場面以上にリアリティがあり、強烈な体験になる。しばしば催眠からさめた後に、クライエントは目を輝かせて前世体験を語ってくれる。イメージの鮮明さや体験の強烈さは、臨床的効果にはつながるものの、客観性の根拠ではない。大きな夢を見たときに、それが強烈な印象と情動的体験をともなったからといって、その夢が客観的な出来事だと考える人はいないのと同様である。」
(http://www.sagami-wu.ac.jp/ishikawa/PLTexamination.pdf)
このサイト(http://www13.plala.or.jp/socialanimal/index.html)によると、脳というのはその性質として、うまく処理できないことがあっても、何とかして無理やり何らかの結果を出力して落ち着こうとするのだそうだ。このときエラーが起き、似た記憶や無関係な記憶が結びつくこともある。そしてこれがデジャヴや前世の記憶の正体だと考えられている。「勘違い」というのもこの作用のせいであるらしい。
だから、例えば催眠下で「原因となったところまで遡って下さい」と言われて、もしその記憶が見つからなければ、脳が潜在意識やら何やら、あちこちから情報を引っ張り出して、何とか指示に応えるべくフィクションを作り上げてしまうのだそうだ。
実際、1990年代アメリカで、催眠によって、両親から性的虐待を受けたということを「思い出した」患者が次々と両親を訴えたが、調査の結果、殆どのケースでそのような事実がなかったということが分かり、大きな社会問題となったことがあったという。
とゆーことは、アクセル・ローズが「思い出した」記憶というのも、実は本当の過去の事実かどうかは分からんというわけか。
あらま~。そんでは「Regression therapy」を受けても、トラウマとなった出来事がちゃんと思いだされるとは限らんわけだ。せーこちゃん、ショック☆
それに、怪しみつつも、「前世が見えるのか~、それは面白い」なんて、ちょっとばかし頭の片隅で思ってたのに。
まあ前世とか輪廻転生があるのかないのか分からないけど、あるにしたってそんな簡単に見えちゃうわけ、ないよな~。![]()
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