経済・政治・国際

「お金」という概念

日曜日、ふとテレビをつけたら、「たかじんのそこまで言って委員会」という番組が映った。これはやしきたかじんの司会で、政治家や評論家、芸能人などをパネリストに、社会問題や政治、芸能ニュースなどを討論する番組である。大阪の読売テレビの制作の筈だが、関西ローカルなのか全国ネットなのかは分からない。
その番組で、今回麻生内閣で浮上している政府紙幣についての話をしていた。

私は実はその番組があまり好きではないので、すぐにチャンネルを変えちゃったんだけど、はて。そういえば紙幣の発行は、日銀が行っていて、流通量も調節しているんですよね?政府紙幣って、なんじゃらほい。国債とは違うんかいな。

「ええ大人のくせにそんなことも知らんのか」と怒られそうだが、知らんもんは仕方がない。でも小学校と中学校に通って、高校にも行って、更に大学まで卒業してる、ごく普通の平均的な市民である私が知らないってことは、他にも知らない人はいっぱいいるのではないかと。えへ。coldsweats01

というわけで、政府紙幣について調べたら、ちょうど上手く情報がまとまった便利なサイトがあったので、ご紹介。down

http://mainichi.jp/select/biz/news/20090205ddm008020085000c.html

詳しくはこのURLを見ていただくとして、まとめると次のようになりますな。

・ 現在、我々が「お金」と呼んで使用しているのは、「日本銀行券」のことで、日本銀行が発行したもの。紙幣の発行及び流通量の調整は、日本銀行のみが行うことができる。
・ 政府紙幣とは、「日本銀行券」とは別に、政府が発行する紙幣のこと。価値は、日銀券と同等であることを保証される為、普通の「お金」と同様に買い物や給料の支払いに使用することができる。
・ 政府紙幣発行の利点は、国債と違い、利払いや元本返済などをしなくて良い為、税収が少なくなっている中で大規模事業を行うとき、赤字を増やさず歳出を拡大できる。
懸念としては勿論、実質上紙幣の流通量が増えることになる為、急激なインフレを引き起こす可能性がある。

へ?ほな、あかんがな。
だいたい、日本銀行が政府とは独立した立場であるのは、政治的圧力などでむやみな紙幣発行ができないようにということでしょう?
政府紙幣を発行するのは、それで大規模事業を行って、そうこうするうちに景気が本当に回復させることが目的ということですよね?でも順調に回復して消費も伸びて、とならんかったら、ハイパーインフレ? …って、そんなんなったら、日本円の信用ってもんが…sweat02

更に問題は、そのたかじんの番組でパネリストの一人がちらりと言っていた政府紙幣の使い道。
「定額給付金を一人12,000円でなく、政府紙幣で一人20万円分給付すれば、約1桁も多くなるのだから、消費が伸びるだろう」

政府紙幣の発行って、政府による内需拡大の為ではないの?
てゆーか、この人はあほじゃないだろうか。1万円だろうが20万円だろうが、現在の状況じゃ、殆どの人は使わず貯蓄して終わりだと思うんですけどね。

消費が伸びない理由なんて、決まってるやん。
収入と生活の保障がないからですよ。
バブルの頃、何であんなにみんなお金をばんばん使ってたのかって、それは単にたくさんお給料を貰ってたからというより、高額の買い物をしても、次の月にはお給料が必ず入ってくる、ボーナスもたんまり出る、という見込みがあるとみんな思っていた(そして、1992年にバブルが崩壊するまで、実際にあった)からでしょう?

今みたいに、探してもなかなか正社員雇用がない、あっても終身雇用してもらえるとは限らない、派遣や請負社員だと、更に長期雇用の保証はなく、実際に昨年の年末から今まで、大量の派遣社員が契約を更新してもらえず路頭に迷ってる、なんていう「次の月の収入の保障がない」状況じゃ、誰も安心してローンを組んで大きな買い物なんてできないし、いつ路頭に迷うかと思えば、とりあえず貯めといて自己防衛しておかないと、と思うのは当然ですわね。だって、失業したって国は何もしてくれないんだもの。

そんな訳の分からんお金のばら撒きをするくらいなら、その予算を雇用対策に充てていく方が、長い目で見て絶対消費も景気も回復すると思う。

日本の産業そのものが回復して、農業製品も工業製品も、ちゃんと生産できるようになる(=物がある)状況にならんと、紙幣だけ乱発したら、本当に日本経済が無茶苦茶になるだけかと…。

だいたい、そもそもお金とは、何なのでしょう?

もともと人間は物々交換をしていたのだが、物そのものを常に持ち歩くのは重いし不便だし、食べ物だと時間が経つと腐ってしまったりするので、その価値を代用するものとして、初めは貝殻とか、後には金とかそういうもので、価値の代用を行うことで、市場取引というものが始まったんですよね、確か。
お金というのは、お互いの合意によるお約束のもと成り立っている、物の価値を代用する交換の為の媒体だということになる。お金のおかげで、共通の価値の尺度にもなるし、物そのものと違って価値の貯蔵も可能となる。
更に、同様の「価値」を有する物という意味では、証券や債券なんてのも、今や「お金」という概念の一部であると考えていいと思う。

お金は、そのものは紙だったり金属だったりするが、そこにそれ以外の概念としての「価値」を含む、具体物のようで抽象物という、とても曖昧なものでもあって、私ら一般大衆には、身近でありながら実はとても認識しにくい物だと思う。

なのに。こんな訳の分かるようで分からんようなものの流通ということを前提とした資本主義社会に生きていかなかればならないというのに、日本の学校では、そういったものとの具体的な付き合い方を全然教えてくれない。
教えてくれないから、私のように、よう分からんまま大人になって、「政府貨幣の発行が云々」と新聞に書かれても、それが良いことなのか問題のあることなのか分からず、政策を支持していいのか駄目なのか、判断がつかないという困ったことになるわけだ。

以前ニュースで、アメリカの教育現場では、株式の模擬売買ゲームのようなもので、株式売買の仕組みを学ぶということを行っており、日本の学校でもそれを導入するかどうか、などという報道を見たことがある。

あのね、あれはですね、株式売買の仕組みや経済の動きを体験的に学ぶことを目的としているのでは、実はありません。それもありますが、あれは、証券や債券といったものも含めた「お金」という概念を教える為の場なのです。その報道では片手落ちです。
あの国もたいがい……ですが、元々自由主義経済を謳っていた国だけあり、社会人になってきちんと「お金」と付き合っていけるよう、ちゃんと教育の現場で教えてるってことです。

逆に、我々が中学校の社会で習った金融政策の項目を復讐、いや復習してみよう。

・ 市場全体に流通する通貨量を管理する仕組みを「管理通貨制度」といい、これは日本銀行が行っている。
・ 日本銀行は、民間の銀行への資金貸し出しや預金の受け入れをしているところから、「銀行の銀行」と呼ばれている。
・ 日本銀行は、政府から独立してお金(=日本銀行券)の発行を行い、また流通量の調整を行う。流通量を調節して、物価や景気の安定を図る政策を「金融政策」という。
・ 日本銀行が民間の銀行に資金を貸し出すときの金利を「公定歩合」という。不景気のときにはこの公定歩合を引き下げる。

はい、思いだしましたか?
括弧(「」)内の用語を覚えておけば、高校入試はばっちりでしょう…ってほんまかいな。

でもこれだけじゃよう分かりませんわね。少なくとも私は分からない。
「おいおい、これだけで終わるなよ」と言いたいとこですが、これだけだし。(笑)

いったい文部科学省は、日本の子供をどのような大人にしたいと考えてるのでしょう?
「管理通貨制度」「銀行の銀行」などという語だけを教えて暗記させて、それでどんな社会人になるのでしょうか。
そんな教育ビジョンもへったくれもないところに、「株式売買ゲーム」だけを導入したって、どうせまた鼻クソ程度にだけ株式の投資テクニックを覚えて終わりじゃないかと思うんだけどなあ。(^_^;)

ちなみに、金融政策についてもう少し詳しく知りたい人は、とりあえず日銀のホームページで再度「金融政策の概要」をざっと勉強しておきませう。down 

http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/expseisaku.htm

ところで。バラク・オバマの金融政策法案が、下院を通過した。
どうやらものすごい額の国債を日本に買わせるつもりらしい。
どうせ日本の政治家はそれを飲むんだろうな~…我がとこの経済がえらい状態だというのに。
まあね、アメリカに逆らったら、某氏みたいに失脚させられるかもしれないもんね。

アメリカ合衆国政府は、自国の民の利益の為に動いていますが、日本政府は日本国民の為に動いてくれるとは限りません。
皆様、次の総選挙はその辺もよく考えて、慎重に投票を行いませう。rock

|

最先端技術は誰の為に?

火曜日の新聞に、「クローン牛は安全との食品安全委員会の結論」という記事が載っていた。

が、この「食べても安全」っていうの、どういう実験や検査のもとで出された結論なんでしょう?そこが分からんかったら、この記事を読んでも、何とも考えようがないではないか。
ちゃんと報道してくれよ~。

私はわりかし疑り深い。
医者・科学者・製薬会社・厚生労働省などの言う「安全だ」「大丈夫だ」は、基本的に疑ってかかることにしている。
彼らの説明は、専門家の話として、できるだけ偏見や先入観を入れないようにして、まずはきちんと聞くことにはしているが、決して鵜呑みにはしない。
逆に、これらの専門家が「やめておいた方が良い」「安全性が疑わしい」という場合は、素直に従うことにしているが。

何でもかんでも疑ってかかるのは良くないかもしれないけど、やはり小学校とか中学校の理科や保健で習ったことを思い出しつつ、常識(デカルトのいうところの"Bon sens",或いは"Common sense"ですね)でもって判断していかなければならないであろうかと思う。

こういう新しい技術となると不確定要素が多いし、特に慎重に事を運んでいただきたいものです。
だいたい、クローン牛って死産や誕生直後に死ぬ例が多いって書いてるんだけど。
健康に育つのは半分くらいとのことで、それ、やっぱり何か問題があるんじゃないの?
「生後6ヶ月を過ぎたら、一般の牛と差異はない」って言われても、いまいち説得力がなあ…どう差異がないのか、それじゃ、説明になってないぞ。

クローン牛や豚の目的って、肉質の良い牛や豚を低コストで量産可能にするってことですよね?
でもそもそも、そういうこと自体が必要なんですか?
食糧自給とかそういう問題なら、本当に安全なのかどうなのかよう分からんというか、安全確認までにまだまだ時間もコストも掛かりそうな研究に莫大な費用を投じる前に、他にまだまだできることがあると思うんだけど。
経済的にはそれだけ回収できる見込みがあるってこと?
んーと、でも本当に高級松坂牛と同じ品質の牛肉が簡単に量産できちゃうと、必然的にブランド価値ってなくなっちゃいますよね?
…しかしこうなると、これって一体、誰の為の研究、誰の為の技術なんでしょうか。

|

A Change Is Gonna Come?

バラク・オバマの大統領正式就任が目前に迫っている。

お正月、アメリカの有識者によるディスカッションだか講演だかの番組をNHKでやっていて、そのとき一人の方が、次のようなことを言っていた。
「バラク・オバマの外交政策は、ジョージ・W・ブッシュのものとは随分違ったものになるだろう。武力による“正義”と“民主主義”の押し付けではなく、対話による外交に移行していくだろう」

当たり前じゃっ! dash 

…と言いたいところだけど、いや、本当に是非そのようにしていただきたいと思う。

アメリカだけでなく、日本も欧州各国も同じだけど、一応曲がりなりにも「近代民主主義国家」をエラソーに標榜してるんだったら、まずはしっかりと対話と駆け引きによる外交によって紛争解決に尽力して欲しい。それが基本的には政治家としての手腕というものだろう。

4、5年前、どっかの新聞だったかで、「膨張する戦場ビジネス。警備に給食、クリーニングまで」というような内容の記事が載っていた。しかも、これらの軍需産業大手にドナルド・ラムズフェルドなど、ブッシュ政権の構成メンバーのかかわりが深いと聞けば、何だかもう脱力するというか、やりきれないsweat02 

私は別に国際政治の専門家ではない。日本文学科出身ののんき者である。
だから、要らん心配をせずに平和に毎日ご飯を食べて、楽しく過ごして、寿命まで生きていけたらいいなあ、と思っているだけなのだが、やれガザ・ストリップでドンパチ、アフガンで外国人ジャーナリストが誘拐、アフリカ南部で飢餓、国内では派遣切りで大量失業などというニュースが日々耳に入ってくると、落ち着いてご飯も食ってられんじゃないか。

思うに、50年近く前にアイゼンハワーが退任演説で軍産複合体について警告してたこと(down)を、みんないっこも聞いてないな。ピークオイルは目前だというのに。

"In the councils of government, we must guard against the acquisition of unwarranted influence, whether sought or unsought, by the military-industrial complex."
"We must never let the weight of this combination endanger our liberties or democratic processes."

日本も解散総選挙が近いという。
わたくしもアイゼンハワーの言葉を思い出し、心して選挙に臨まんとなあ、と思う。

"Disarmament, with mutual honour and confidence, is a continuing imperative. Together we must learn how to compose differences, not with arms, but with intellect and decent purpose."

とゆーわけで。(どういうわけだか)
アイゼンハワーからちょうど10代目。経済危機に中東情勢、環境問題と、えらい時期の船出となり大変ですが、第44代大統領、頑張って下さい。

|

試行錯誤の裁判員制度

来年5月21日から、裁判員制度が実施される。
もう少し正確にいえば、2009年5月21日以降に検察庁より起訴のあった事件が、裁判員裁判の対象となる。

この制度の実施に先立ち、各地裁では一般から登録者を募っての模擬裁判を行っている。で、私も先日模擬裁判に行って参りました。
合気道道場の兄弟子に、地裁の裁判官の方がいるもので、登録してみたわけです。

で、色々と面白く勉強にもなったので、ちょっとご報告。

*基礎編*
裁判員裁判の対象となる裁判
民事ではなく刑事事件、しかも殺人などのかなりシリアス度の高いものが対象となります。テレビで話題になるような事件は、まず対象になると思っていいでしょう。

裁判員になれない人/辞退可能な人
詳しくは最高裁が立ち上げている裁判員制度のウェブサイトを見ていただきたいですが、大まかに言うと…。

☆裁判員になれない人
・政治家や司法関係者
国会議員、国務大臣、都道府県知事及び市町村長、自衛官などのほか、裁判官や検察官などの司法関係者、大学の法律学専門家(教授・准教授)などが該当。

・国家公務員になる資格のない人(=国家公務員法第38条の規定に抵触する人)
裁判員は臨時の国家公務員という扱いになるので。
禁固以上の刑に服役中、或いは起訴されている最中の人、逮捕または勾留されている人などが当たるらしい。

・審理される事件の関係者
原告/被告本人、原告/被告の親族や同居人、事件の証人等。

☆裁判員を辞退できる人
・70歳以上の人
・会期中の地方議会議員
・過去5年以内に裁判員を経験した人
・その他政令で定められた事由、その他のやむを得ない事由があり、参加するのが困難な人。(やむを得ない事由とは、妊娠中や出産後間もない女性、介護が必要な同居人がいる、事業上で著しく損害が出る可能性がある、管轄の裁判所が遠くて通うのが困難等のことだそうです)

裁判員の選び方
・前年12月までに、次の年の裁判員候補者名簿を作成。調査票を候補者に送付。
・その返信により、裁判員になることが可能かどうか(=上記事項に該当するのかどうか)を確認。
・事件があれば、候補者名簿からくじで選んだ約50名程度の人に呼び出し状郵送。
・その際同封される質問票にて、候補者は参加可能かどうか返信。
・当日集まった人の中から、更にくじで裁判員6名と補充裁判員2名を選任。

裁判の期間
事件の内容により、3日とか1週間とか決めるようです。
だいたいは数日中と考えていいらしい。
予定どおり進める為、事前に裁判官/検察官/弁護士の三者で、事前に証拠を整理して争点を明確にしてから、当日の公判に臨むとのこと。

裁判の進め方
法廷での公判に立ち会い、その後評議室にて評議。
評議は、裁判官3名と裁判員6名(補助裁判員も出席して傍聴)で行われ、意見が分かれた場合はこの9名の多数決にて、有罪/無罪、有罪ならどのような刑かを評決。

*疑問編*
陪審員制度とどう違うのか?陪審員制度は、戦前存在したが廃れたのではなかったか?
陪審員は12人で、裁判官抜きの陪審員のみで評決を下す。
戦前の陪審員制度は、争点の整理などという非専門家である陪審員に対する工夫が殆どなく、評議を進めるのが大変であったようである。
また、被告が陪審員による評決を利用するどうかを選択できたのだが、日本では年々利用されなくなり、廃れていったのだそうだ。

裁判員は補助を入れても8名なのに、何故50名もの候補者に呼び出し状を送るのか?
今の時点では、呼び出し状を送付した人のうち、実際にどれくらいの人が裁判所に来ることができるのか読めないので、かなり多めの人数から打診を始めるようです。
制度が施行されて、もっと少なくても大丈夫なようなら、徐々に最初に打診する人数も減らしていくことになるだろうとのこと。

●「やむを得ない事由」って他には?どこで辞退許可の判断の線引きしてるのか?
今の時点で発生するだろうと考えられる「やむを得ない事由」が挙げられているだけだと思うので、制度施行後、裁判員法に書かれている事柄以外にも、辞退が認められるケースも出てくるのではないでしょうか。
どうしても無理そうな場合は、とりあえず申告した方が良さそうです。

裁判は本当に予定通りの期間で終わるのか?
終わることができるだろうとのことです。
が、思わぬ事態で、審理期間の延長ということが絶対に発生しないかというと、まだ分からない、というのも正直なところのようです。
例えばオウム真理教の元信者に対する裁判は足掛け2年以上に渡って続いているけれど、それは1回の公判のあと、次は1か月後、なんてことがあるからですよね?
こういうものも、裁判員裁判の場合は、間をあけずある期間に集約して行うことで、それなりの期間で終わらせようとするらしい。

*ケーススタディ*
今回の私が参加した模擬評議の為の架空の事件:
「あるスナックで客の2人が争いになり、店舗前にて1人が持っていた包丁でもう1人を刺した」
殺意を持って刺した(検察側)/誤って包丁で刺した、殺意はない(弁護側)ということが争点となっている。

証拠や証言は意図的に少なくしており、原告と被告の主張する事実関係は食い違う。
証拠が少ないのだから、狙って刺したのか誤って刺したのかという事実関係の認定がそもそも難しい。
検察側は「15.3cmの包丁が10cmも刺さっている。刺そうという意図がないとそれほど深くは刺さらない」と言い、弁護側は「たった10cmなのだから…」と来る。
我々素人としては、そもそもどれくらいの力をかけたら包丁が10cm腹部に刺さるのかというのが分からないから、まず「10cmも」なのか「10cmしか」なのか、というところから議論になる。
殺意の有り/無しについても、
「ちょっと痛い目に合わせてやろう、と殺す気までなくて、で結局ブスリといってしまったときも『殺意あり』なんですか?」
「あんまりそれだと『殺意がある』って感じがしないなあ」
などと、殺意があるのかないのかという認識というか、感覚の違いというのも、なかなか難しい。

もし起訴状にある「殺意を持っていきなり相手を包丁で刺した」というのが事実なら、積極的な殺意があったわけではないということを考慮して、検察側の求刑は6年。
これも、懲役3年執行猶予5年から懲役10年まで、幅がある。
「本人も殺そうという積極的な意図があったわけじゃないし、原告人だって先にボコボコに殴ってるんだから、執行猶予付きでいいのでは」
「いくら腹が立ったとはいえ、そこですぐ包丁を持ち出すような人間を、執行猶予付きとはいえすぐ社会に返していいのか?」等々、意見も様々。
結局は懲役5年という意見が最も多く、今回はそこに落ち着いたのだけれど。

あとで裁判官の方々に聞いたところでは、模擬評議の模様をビデオに撮って後で見てみると、最初は「何か裁判長ばっかり喋ってるなあ」と言われ、それではとあまり喋らないようにしていると、評議のまとまりがつかなくなり…。
「各裁判員から発言を引き出し、裁判長が喋りっ放しにならないようにしつつも適切に情報は与え、きちんと評議の方向を誘導する」というのは、言うは易し行うは難しで、なかなか思うようには行かなくて、難しいようです。

例えば、量刑の資料を予め裁判員に示すかどうかというのも、その場に集まった人の質にもより、どちらが良いというように簡単にマニュアル化できることではない。
ある人は、先に出してもらわないと何ともアイデアが出ないと言うだろうし、つい意見が引っ張られるから先に出さないで欲しいと言う人もいる。先に出されても、それはそれとして、自分の感覚でまずは意見を言えるという人も勿論いるだろう。

とはいえ、「司法の場にも民主主義を」ということで司法の現場では、めげることなく何度も模擬裁判と模擬評議を行い、裁判官、検察官、弁護士のが皆様自ら出演して架空事件公判のVTRを作成もし、と真面目に試行錯誤を続けていらっしゃるようです。

この模擬裁判は、来年の2月くらいまでやっているらしいので、可能な人はボランティア協力してあげて下さい。

|